｢倒錯者の祈り｣　デヴィット・ウィルツ - 横浜市 元町 中華街の美容室

あらすじ

薄暗い家の居間で、薬を打たれ体を固定された男が、ゆっくりと血を抜かれている。帰宅した家の主ダイスは、蒼白な顔となった男の髪にやさしくブラシをあて、用意したスーツを着せ、レクイエムを流しながら、死にゆく者にうっとりと目を向けて食事を始めた…。保険会社勤務の平凡な男ダイスは、次々と男を拉致、殺害し、死体を切り刻んでいく…。小さな町で相次ぐ謎の失踪事件の調査依頼に対して、元FBI捜査官ベッカーは、犯人の意識に入り込む独特の捜査方法で事件の深層へと向かう。傑作サイコ・ミステリー。

前から早く読み始めたいと思っていた、デヴィット・ウィルツ薯

元FBI捜査官ジョン・ベッカーのシリーズ物だ。

なぜベッカーを読みたかったというと

もちろん読んで楽しめるのもあるんだけど

ポイントは、異常殺人者を追い詰めるベッカーも

犯人同様に狂気に蝕まれているという部分。

狂気に蝕まれた主人公と犯人の物語。

殺人者ダイスは、最初は追う、狩る立場にいたのだが

ベッカーの登場で、追われる、狩られる側になってしまった。

どんな気持ちだろう・・・

危険な男ダイスが、最初ベッカーと会った時

ダイスは、｢あの男は、とても危険な奴だ。かならず抹殺しなければならない｣と

危険な奴が、奴は危険だと確信するところが面白く、

ベッカーは、ダイスを追い詰めていく途中

｢俺たちは結ばれている。コインの両面・・・ひょっとしたら、同じ面かもしれない。」

ベッカーには、わからなかったし、今の所はどうでもいいことだった。と

ベッカーはダイスの正体を知った後、

捜査のためとはいえ、彼のとった奇怪な行動を真似てみる

ベッカーの姿には、読んでいて狂気を感じる。

犯人の心と同化し(感情移入?)、独特の捜査をするベッカーは、

仲間からは、引かれてるけど優秀な捜査能力で

伝説的人物として知られていた。

トップの切れ者達も、難解な事件を依頼しざおえるしかない。

しかし、ベッカーには、殺人者を逮捕するさいに、

喜びを感じつつ殺してしまうという悪いクセがあって、

その悪癖に気がついたベッカーは自らFBIを辞めたのだ。

ベッカーは独自の情報分析で、失踪者にある共通の要素を

発見し、自らが内に抱える狂気に苦しみながらも、

次第に異常殺人者ダイスに迫っていくのだ。

今までに、沢山のハード・ボイルド・ヒーローを読んできたが、

ベッカーは、また違うアウトロー・ヒーローだ。あたりまえだけどね。

初めて出会った、コンプレックス・ヒーローだと思った。

物語の中で、ベッカーが通っている、精神分析医との会話が

随所に出てくるんだけど、二人の会話がとても面白いんだよね。

意思の問題

問題は最終的に何をするか

真実と嘘

印象と直感の比

自制できるか、できないか

正気か狂ってるか

精神分析医がベッカーに

｢あなたはいつもわかるんですか？人が正気か狂ってるか?｣

ベッカーは、にたりと笑いながら

｢どこが違うのかね？｣

読む前にベッカーを、口数が少なく、暗い印象で、少し威厳があり、

誰とも上手く付き合えず、孤独な男なのかなと、思っていたけど

全然違っていて

結構陽気で、誰とも普通に会話でき、笑うし、ユーモアのセンスも、

持ち合わせていて、ちょっとビックリしたけど

余計、好感と不気味さを感じ、ハード・ボイルドに

慣れているオレには、新鮮な印象を与えてくれた。

次作が、楽しみだ。

｢闇の狩人｣

｢闇の狩人｣は、元FBI捜査官ではなく

FBI捜査官だったころの、話しみたいだ。

｢倒錯者の祈り｣とは、前後してるということか。

てか、

暗闇で、ベッカーに確実に少しづつ距離を縮められ

迫ってこられたら、怖いな。

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